大企業の暗部を暴く!?『赦しのサクラメント』の衝撃と見どころ
ある日突然、企業トップの命が狙われた事件が発生。
その舞台がなんと空の中、ヘリコプター。
ミステリー作家の阿部考二が描く『赦しのサクラメント』は、第19回『このミステリーがすごい!』大賞で「隠し玉」として注目を浴びた企業ミステリー作品です。
ヘリコプター内での社長殺害という驚愕のプロットに、企業内のドロドロとした人間模様、独特の懺悔ビジネスの展開が絡まり合い、小説冒頭から読者の心を掴んで離しません。
この記事ではこのミステリーのポイントや魅力を分析し、読者にその魅力を余すところなくお伝えします。
ミステリーの主役、西園寺係長の魅力とは?
物語の中で異彩を放つ存在、それが西園寺係長です。
彼の特異なポジションは、通常の企業ミステリーの構造に新たな視点を提供します。
彼は「赦しのサクラメント」という懺悔ビジネスを立ち上げ、さまざまな人物の悩みや罪を聞くことで、業績を上げるとともに事件解決の鍵を握ります。
彼の持つ類いまれな共感力が、企業内での人間関係を見抜く力としてストーリーを牽引します。
この懺悔ビジネスという発想も、企業コメディとしての一風変わった面白さを提供し、西園寺の存在が事件解決にどのように貢献するのか、読み進めるうちにどんどん興味がかき立てられます。
無言の三人、沈黙の中に潜む真実とは?
この物語のもう一つの大きな軸は、同乗していた副社長、専務、常務の三人です。
社長の死に対して何も語らぬ彼らの沈黙が持つ重み。
その間に何が起きていたのか、一切の自供がないために釈放されながらも、社内での異様な空気感を伝える存在として、非常に興味深い役割を担います。
彼らが社長の指示でアイマスクをし、大音量で音楽を聴いていたことが事件解決の重要な鍵となります。
沈黙の原因となった背景には何が隠されているのか。
その謎に惹きつけられる読者は少なくないでしょう。
'懺悔ビジネス'の斬新なアイデアとその影響
懺悔ビジネスという響きは意外かもしれませんが、西園寺係長のビジネスモデルは非常にユニークであり、作品の中で一際異彩を放つ要素となっています。
罪を抱え、悩み続ける人々が集まり、それを聞くことで彼らに心の平穏を与えつつ、西園寺自身も企業内での「懺悔」をベースに業績を上げていくという展開は、ビジネスの可能性を広げる視点に読む者を驚かせます。
この構造が作品全体にコメディ要素を与えつつ、真面目なテーマを浮き立たせる巧みな手法として読者の心に残ることでしょう。
予想を覆す、どんでん返しの結末
この作品の醍醐味は、何といってもそのどんでん返しの結末です。
ミステリーの定石を踏まえつつ、最後に訪れる意外な結末は、ミステリーファンにとっては必見です。
読者は、気がつくまでは分からない伏線が巧妙に散りばめられていることを知り、最終ページで明らかにされる事実に驚愕することでしょう。
この驚きこそがミステリー作品の醍醐味であり、作中に配置されたヒントを拾い集めながら各ページをめくる体験が、深く印象に残ります。
まとめ: 『赦しのサクラメント』を読み解く魅力
阿部考二が描く『赦しのサクラメント』は、サスペンスのスリルと企業コメディの面白さを絶妙にブレンドした作品です。
読者は西園寺係長の奔走を目撃し、彼の類いまれな共感力がどのように事件の核に迫るかに注目させられます。
同時に、企業内での人間関係をオモシロく描き出し、その背景にある罪と赦し、問題解決のプロセスを楽しむことができるでしょう。
沈黙の背後にある真実が徐々に明らかになり、最終的には誰も予測しえない結末に辿り着くこの作品は、ミステリーファンだけでなく、企業文化に興味を持つ読者にもおすすめです。
ぜひこの作品を手に取り、その独特の世界に浸ってみてください。