序章 退職理由の本音に迫る
企業でよく耳にするのが、「他にやりたいことがあるので」「留学します」「家庭の事情で」という退職理由です。
しかし、その裏には本音が隠されていることが少なくありません。
優秀な若手社員が会社を去る際、本当の理由を告げることはまれです。
そして、企業側はその真相を知らないまま、「人手不足」という深刻な問題に直面することとなります。
従業員の定着は、企業の長期的な競争力を保つためにも非常に重要となる課題です。
本書『社員に捨てられない会社を目指して』では、若者たちがなぜ会社を辞めてしまうのか、その本音に迫ります。
そして、企業がいかにして優秀な社員を定着させるか、リテンション・マネジメントの策を詳しく解説しています。
第1章 社員に捨てられる会社
この章では、企業が抱える問題点を中心に分析しています。
いくつかのケースを紹介し、「社員に捨てられる会社」について深く検証します。
表面的には魅力的で安定した企業であっても、内部では社員が不満を抱えていることがあります。
たとえば、仕事に対するやりがいや将来性が感じられない場合や、上司や同僚との人間関係が円滑でないことが退職理由として挙げられます。
また、企業文化が社員に合わなかったり、従業員としての価値が認められないと感じたりすると、社員は他の選択肢を模索することになります。
こうした問題を解決するためには、企業はどのように社員を評価し、モチベーションを維持するかが問われます。
組織としての柔軟性や、個人の成長に対する支援体制の構築が必要となります。
第2章 若手はこうして会社を辞める
若手社員が会社を辞めるプロセスを具体的に紹介します。
入社当初こそ意欲的で夢に溢れていたとしても、次第に不満が蓄積され、最後に退職という選択を取るまでの流れを追います。
ある若手社員のケースでは、「将来が見えない」「『こんな風になりたい』と思える先輩がいない」といった不安感がモチベーションの低下を招き、最終的には会社を去る原因となりました。
また、労働量と給料が見合わないと感じることで、他の収入源を考えざるを得ない状況になることもあります。
この章を通して、企業がいかに若手社員の不安や不満に敏感でなければならないか、その重要性が説かれています。
第3章 社員が辞める会社・辞めない会社の境界線
ここでは、社員が辞めてしまう会社と、辞めない会社との違いを探ります。
辞めずに働き続ける社員たちがどのような環境に魅力を感じ、安心を抱いているのかを具体的に説明しています。
社員が定着するためには、キャリアパスの明確化や、働く環境の改善が不可欠です。
また、働く目的が明確で、企業としてのビジョンに共感できる環境も重要な要素となります。
そして、退職を選ばない企業文化や、社員の提案を受け入れる風通しの良さも、大きな影響を与えます。
ハラスメントフリーの職場づくりや、社員の声を積極的に吸い上げる取り組みの事例も紹介しており、企業が取り組むべき具体的なポイントを明確にしています。
第4章 社員の定着のためにできること
それでは、具体的に社員を定着させるためにはどのような施策が効果的なのでしょうか。
ここではリテンション・マネジメントの概念を中心に、実践的な対策を紹介します。
まず、社員が求めるスキルアップやキャリア形成の場を提供することが大切です。
これによって、社員が自分自身の成長を実感できる場を作り出します。
また、評価制度を見直し、頑張りが適切に評価され、成果に結びつく体制が求められます。
給与体系やインセンティブ制度の改善も、多くの企業が取り組むべき課題です。
社内コミュニケーションを活発にするための工夫や、社員の健康を考えた職場の整備も必要です。
これらの対策によって、社内のモチベーションが向上し、高いパフォーマンスを維持することが可能となるでしょう。
第5章 働き方改革とリテンション
最後に、現代における働き方改革と、リテンションの関係について考察します。
働き方改革は、リテンションマネジメントにとって重要なテーマであり、時代の流れを反映するものでもあります。
フレックスタイムやリモートワークの導入により、社員のワークライフバランスが改善されることで、より働きやすい環境が形成されます。
また、新しい働き方を支援するためのツールや制度の充実も、社員の定着を図る上での鍵となります。
社員一人ひとりの働き方に合わせた支援を行い、個々のニーズに対応した柔軟な組織運営が、これからの時代には求められます。
このように、変革期においていかに社員を引き留めるか、その方法を多面的に考えることができるでしょう。
まとめ 優秀な社員を定着させるために
本書『社員に捨てられない会社を目指して』を通じて、企業が抱える課題からその具体的な対策まで、一貫した流れで理解することができます。
優秀な社員を定着させるための鍵は、組織としての在り方や、社員一人ひとりの価値観をどれだけ認識し、対応するかにかかっています。
本書を手がかりに、貴社の将来の姿を見据えた、戦略的なリテンション・マネジメントに取り組むための参考となることでしょう。
著者名: | 山本 寛 |
出版社名: | 日本経済新聞出版社 |
ISBNコード: | 9784532263751 |
発売日: | 2018年06月12日頃 |